「『変わっていない』は勘違いだった。SPECIALIZEDがTARMAC SL9で本当に目指したもの」

「変わっていない」は勘違いだった。
TARMAC SL9は”完成”を更新したロードバイク。

※この記事はVol.1『Tarmac SL9発表|重量・価格・SL8との違いを徹底解説』の続編です。

スペックや変更点をまだご覧になっていない方は、ぜひVol.1からお読みください。
Vol.2は私小川の個人的な解釈、見解をもとにSL9に乗り換える理由を探る内容になります!


「あまり変わっていない。」

TARMAC SL9と思われる画像が公開された時、多くの人がそう感じました。

実際、私もそうでした。

横から見ればSL8から2,3箇所エアロ化したぐらい?

もちろん、「SPECIALIZEDが作るバイクだから悪いものではない」という確信はありました。

だから私は情報を得た段階でSL9を注文することを決めていました。

それでも心のどこかでは、

「まぁ予想通り、エアロ性能を少し高めたぐらいかな。」

その程度の認識でした。

しかし、試乗会で実車を見て、開発プレゼンテーションを聞き、そして数日後に実際にフレームがRX BIKEへ入荷して改めて眺めた時。

私は自分の考えが間違っていたことに気付きました。


見れば見るほど違う。

最初はフォークでした。

「ずいぶん太くなったな。」

それが第一印象です。

ところがそこからヘッドチューブを見て、トップチューブを見て、シートチューブを見ていくうちに違和感が積み重なっていきます。

「あれ?」
「ここも違う。」
「ここも。」
「……ダウンチューブ以外は、全てが明確に違うじゃないか。」

そう思わずにはいられませんでした。

横向きの商品画像だけでは伝わらなかったものが、実車にはありました。

それはスペックではありません。

設計思想です。


「変えられなかった」のではない。

「変えた結果、この形になった。」

私は今回、この言葉がSL9を最もよく表していると思っています。

フォークをエアロ化する。

トップチューブを見直す。

ヘッドチューブを更に細くする。✅

シートポストを新設計する。

フィンを追加する。

ここだけ切り取れば、他社のエアロロードと同じ発想にも見えます。

でもSPECIALIZEDは違いました。

必要なところだけを変える。

不要なものは足さない。

だからシルエットはほとんどSL8のまま。

もし「もっと変わった感」を演出したいだけなら、もっと大胆な形にすることもできたでしょう。

しかし彼らはそうしませんでした。

速くなるために必要な変更だけを積み重ねた結果、この形に辿り着いた。

それがSL9なのだと思います。


完璧だと思っていたのは、私たちだけだった。

SL8が発売された時、多くの人が思いました。

「これが完成形だ。」

私もそう思っていました。

軽い。

快適。

よく進む。

ハンドリングも鋭い。

正直、「これ以上どこを進化させるんだろう」と思っていました。

UCIの規制が緩和されて色々なブランドからエアロ特化のバイクが出始めました。
(ただ、話にならないほど重たい。それこそプロだから踏めているだけの代物だと感じます。
結局はTARMACが最も「プロだから〜」からかけ離れた万人受けするバイクだと思います。)
TARMACも変わるとしたら現時点で重量の部分は世界トップだから多少重量を犠牲にしながら空力性能の追加かな?と

でもSPECIALIZEDは違いました。
彼らはまだ、その先を見ていました。


「Time to Finish」

今回、最も印象に残った話があります。

SPECIALIZEDは空力性能だけを追いかけているブランドではありません。

彼らが見ているのは、

「Time to Finish」

つまり、

「実際に人が乗った時、どれだけ早くゴールできるか。」

という考え方です。

その象徴が、2024年ツール・ド・フランス・ファムでのデータ解析でした。

デミ・フォレリング選手は総合優勝まで、あと4秒届きませんでした。

SPECIALIZEDは、そのレースのパワー、速度、ケイデンス、ブレーキングなど膨大なデータを解析し、

「もしSL9で走っていたら。」

というシミュレーションを行っています。

その結果は、1分以上早くゴールしていた。

もちろん、これは開発用シミュレーションであり、実際のレース結果を断定するものではありません。

それでも、このエピソードから分かることがあります。

SPECIALIZEDが見ているのは風洞実験の数字ではなく、

“誰よりも早くゴールする”

なのです。


SL9が目指したもの

私はそれを

「独走力」

だと思っています。

空力性能という言葉では少し足りません。

逃げ。

アタック。

一人で風を受け続ける時間。

その状況で、少しでも速く。

少しでも脚を残す。

そのために今回のフィンがあります。

だからボトル1本で最も効果を発揮する。

この説明を聞いた時、私は妙に納得しました。

ヨーロッパのプロレースだけの話ではありません。

日本ではロードレースやクリテリウム、エンデューロなど、1ボトルで十分な距離を走ることが少なくありません。

普段のライドでも、真夏以外はボトル1本という方は多いでしょう。

つまり、この技術は私たちにこそ関係がある。

それがSL9です。


柔らかいことと、剛性が低いことは違う。

今回試乗して、一番確認したかったことがあります。

「エアロ化したことで硬くなっていないか。」

結果から言えば、その心配は全くありませんでした。

SL8が持っていた路面からの突き上げを吸収するしなやかさは、そのまま残っています。

しかし、一方でライダーが踏み込んだ時の反応は、ごくわずかに鋭くなっています。

私は試乗時に、短いストレートですが約950W程度のもがきを何本か繰り返しました。

踏み出しの瞬発力はSL8と大きく変わりません。
極々僅かにハンドリング/フォークの振りに鈍さがあります。
ジオメトリーに変化はないのでこれはフォークのボリューム、重量バランスの変化によるものでしょう。

しかしその先の速度の伸びに違いを感じました。

ここで改めて思いました。

乗り心地が良いことと、剛性が低いことは別です。

路面入力を受け流す柔らかさ。

ライダーの出力を受け止める剛性。

SL9はその二つを、さらに高いレベルで両立しています。


SL8から買い替える価値はあるのか。

これが一番聞かれる質問となるでしょう。

私の答えはシンプルです。

「もっと速くゴールがしたいなら、あります。」

SL7からSL8では、キャラクターの違いから好みが分かれる部分もありました。

でもSL9では、それを感じませんでした。

試乗を終えた率直な感想は、

「悪くなったところが見当たらない。」

これです。

SL8を持っていない状態で、ヒルクライムだけを切り取るならばSL8という選択肢も有りかと思います。

しかしロードレース、ロングライド、平坦、高速巡航まで含めた総合性能では、SL9はさらに完成度を高めています。

一方でSL7やVengeに乗っている方へは、迷わずオススメします。

より軽く。
より速く。
より優しく。
そしてより美しくなりました。

 

それでも迷うなら、SPECIALIZEDのモットーを思い出してください。

Innovate or Die.

その言葉どおり、今回もSPECIALIZEDは立ち止まりませんでした。


「いつから完璧だと錯覚していた?」

SL8を初めて見た時、

私は「これ以上ない完成形」だと思いました。

でもSL9は、その考えを静かに覆してきます。

何も失わず。

何も壊さず。

それでも、さらに速く。

私も一度は、

「あまり変わっていない。」

そう思いました。

でも今なら分かります。

それはネガティブな言葉ではありません。

むしろSPECIALIZEDにとって、最高の褒め言葉だったのかもしれません。

変えられなかったから似ているのではない。

全てを見直した結果、また似た形に辿り着いた。

 

SL8が完成形だと思っていたのは、私たちだけでした。

SPECIALIZEDは、その完成形のさらに先を見ていたのです。

そして私は今、自分のSL9が届く日を心から楽しみにしています。

きっと本当の答えは、これから数千キロを一緒に走った先にあるはずです。

その答えは、Vol.3でお伝えしたいと思います。(自分の頼んだカラーは9月入荷予定…⏳)

今年届かなかった富士ヒルシルバーは、来年SL9と共に達成しよう。

👤著者プロフィール

小川 海里(かいり)

生年月日:1999.06.08

出身地:高知県高知市

スポーツ経験:小学校 サッカー/中学校 陸上(短距離)/高等学校 サッカー

東京サイクルデザイン専門学校 3年制卒

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